年の瀬ナニワ欲望旅行

北欧館がない大阪なんて。

というわけで関西への帰省はやめて東京で年越しを迎えることにした。40を過ぎたゲイにとって実家や親戚の集いはストレスでしかない。親の家で過ごす気詰まりな時間の前には、ひたすら自堕落な1〜2泊の一人旅がないとバランスがとれないのだ。雑煮だのささやかなお節料理だの、自宅で過ごす正月の準備もここ数年で何となく形が定まってきたし、と同時に、旅欲・食欲・性欲を意地汚く満たして過ごす年末はこれから少なくなっていくような気がするので、記録しておこうと思う。

まず新幹線に乗ることが一定のテンションアップを約束してくれる。東京駅の崎陽軒で弁当を、ディーン&デルーカでおつまみを、そしてホームで酒を買い込んで自由席の窓側に陣取れば最高に快適なひとり宴会の始まりだ。人に言うと呆れられることもあるが、何ならこだま号で4時間のんびりと。その場合、掛川あたりで酒が切れるのでホームの売店で買い足す。そんなことやっていたら新大阪に着く頃には立派な酔っ払いの出来上がりだが、旅はこれから。

地下鉄御堂筋線で動物園前まで南下、夕暮れ時の簡易宿泊所にチェックイン。荷物を部屋に置いて、ビリケン様が通天閣から見守る新世界に繰り出す。年々行列がひどくなる有名串カツ屋が並ぶジャンジャン横丁を抜けて「ぜにや」で一杯、「大興寿司」で握りをつまんだら腹ごしらえは完了。

御堂筋線で今度は北上、梅田は北欧館。全力稼働しているヒーターのせいで乾燥しきった空気に肌と喉をヤラれそうになりながら、ごにょごにょとアレやコレ。セックスはピザに似てる、いいやつは旨いし、よくないやつもまあまあイケる。という品のないことわざがアメリカにある。いや、ことわざではないけど、そういう言葉があるの。

下半身が軽くなったら、千日前のおでん屋「でん」に腰を落ち着ける。ここのカウンターでTVの年末特番をよく観たっけ。日付の変わる頃、宿に戻り缶チューハイで仕上げ。当時、深夜に放送されていた「ドキュメント72時間」の総集編をぼーっと見たりして、あれは悪くなかったな。

朝食は動物園前商店街や新世界でモーニング。喫茶店のハシゴや、朝からやってる銭湯で時間を潰して昼時になれば、新梅田食道街「新喜楽」の鴨鍋や千日前の「天政」のきざみうどんを堪能。千日前「正宗屋」なら湯豆腐はマストだし、「松葉」で串カツに食らいつけば阪神梅田にあった立ち飲みスペースのことをいつまでも懐かしく思う。

すっかり空気が緩んだ昼間の北欧館も味わいがあるけど、せっかくなら前夜とは河岸を替えて新世界のロイヤルで遊ぶのもいい。そんな日は新世界、新今宮界隈から一歩も出ない。昼飯は「佐兵衛寿司」で決定だ。

猥雑で脂っこくて後ろめたい愉しみにまみれた旅を東京で思い出す一年最後の日。新年もきっと煩悩だらけだ。