ねえミルク あるいは70年代の恋人たち

サブスクに入ったのをきっかけに、中島みゆきをしばらく聴いている。一番好きなのは「あした」から10年ほどの時代、「浅い眠り」「瞬きもせず」あたりの、力強くもどこか抜けがいい楽曲群なのだけど、初期作もいくつかは聴いていて、「愛していると云ってくれ」(そんなカッコいいアルバム名ある?)は1978年作品だという。

ユニコーンといい、CHARAといい、ミルクが題につくと名曲になる。腐れ縁の男友達を失恋話に付き合わせるそのストーリーのピークはタイトルの種明かし。

ミルク、もう32、あたしたちずっと、このままね

初めて聴いたときにはバキバキにブルージーなメロディとともに、この歌詞に驚いた。「もう」32って。ピチピチやん。男も女も。何なら、まだ始まってないやん。干支三周もしてない。

昔の映画やドラマに出てくる若者はみんなひどく大人びて見える。時代と年齢が交わって遠近感がバグる。例えば金八先生のⅠやⅡの生徒たち。自分が彼らより年上だとまだ信じられない。

札幌の喫茶店で窓の外の雪を眺めながら憎まれ口を交わす、32歳の憂鬱な恋人たちを思い浮かべると、なんだか可愛らしくて抱きしめたくなる。