まだ夢は見るし明日は怖い。諦めはつかねえ。

その女友達と会うときにはこの15年、息子君がほぼいつも一緒だったから、改札に現れた彼女が一人なのを見て「なんだ君だけか、あいつがいないとつまらない」なんて言ってしまった。中学生に見せちゃいけない本をごっそりクローゼットにせっかく片付けたのに。

奴はガールフレンドに夢中だってさ。そりゃママの友達の謎の独身おっちゃんとこなんか来るわけないか。

思えば、結婚やら出産やら子育てやら、人生の実績解除していく友人たちに対して抱いた、「置いてかれてる」寂しさも、すでに遠い。子どもが手を離れたことでまた付き合ってもらえるなら、まあいいか。

仲良しのお兄さん二人(に見えていたと信じたい)で彼女のウチを訪ねていた頃、息子君は就学前だった。正真正銘のシングルになってもう長い。そのうち俺に新しいパートナーができて会わせるときには、いくらリベラルな家庭に育つ子だとはいえ、説明が面倒だと思ったこともあるけれど杞憂に終わりましたとさ。