1995年ごろ

大学入学前の補習授業で提出したレポートに返してもらった先生のコメントを時々思い出す。自分の書いた内容は恥ずかしいので割愛するが、19歳らしい感傷や強がりを未熟な言葉で綴ったものだった。(感傷と強がり?今も同じだ)

君の言いたいことは分かるよ、という意味の文の後に、赤いボールペンの文字はこう続いた。

けれどそれだけじゃ生きられないということも私たちは知っている。君はキルケゴールの「反復」を読むといい。この文章のテーマがそこに書いてあるから。

その後、哲学の授業もいくつかはかじったけれど、結局キルケゴールは読んでいない。数年前に思い立って図書館で岩波文庫を借りてみたが、難しくてすぐに断念した。

大学の附属高校の教師だったあの人は今何しているんだろう。名前も顔も忘れたけど、言葉は残る。先生、せっかく教えてもらったのにすみません。あの本をちゃんと読めれば、それだけじゃ生きられない俺たちの疑問に答えが見つかるんですかね?