青い魚(H館のこと)

オーナーの趣味らしく館内の至る所に置かれた美術品の優雅さは、男同士が性欲を満たすというその場所の身も蓋もない目的とは不釣り合いだった。

エロティックな姿態のオブジェを横目に地下に降りるとブルーゾーン。狭い階段にはいつも、体温そのものみたいな匂いがこもっていて興奮した。30代以下しか入れないことになっているそのフロアは他の階より明るく、「迷路」と、扉のある個室が6つほど。所狭しと二段ベッドが並ぶ区画のいちばん奥には、ロフトみたいなスペースもあったはずだけど、もうずいぶん前に区画ごと閉まってしまった。

2Fには風呂が、昔ふたつあった気がする。あの建物は新館・旧館をつなげた構造なのだが、いつからか片方は閉鎖していた。浴室を出てすぐ、リクライニングチェアでTVが観られる部屋。そう、一応ここはリラクゼーション施設という体になってるのだ。不思議なことに、ここで見たTV番組の断片(漫才のネタやワイドショーの訃報)を今でも覚えている。ロッカー室にも大画面のTVがあり、いかにも大阪ってノリの番組がよく流れていた。

上の階にある大小の「迷路」と大部屋は、どうも俺の好みには照明が暗すぎたけど、この廊下は言わばメインストリートで、冬はストーブのせいで空気がひどく乾燥していた。

個室フロアを挟んだ6階スカイゾーンのことを昔は知らなかった。年齢制限は地下と同じ。住居の玄関っぽいエントランスといい、ガラスが多用されたトイレといい、豪華マンションみたいだ。ビルの最上階にありがちな、地主のための特別に広い部屋という風情。照明は明るく自然光すら入る造りで、20代でここにいたら無敵に楽しかっただろうと思った。

拾い画(当たり前だ、あんなところでスマホを出せるわけがない)を記録としてひとつ。

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