金曜夜のおでん屋で

一週間の終わりに仕事を切り上げて駅前の飲み屋街で呑むビールが世界で一番美味い。

確か15年ほど前だったか、一度は入ったことのあるおでん屋。当時ばあさんがやっていて、年季の入った内装が落ち着く、いい店だったけど、馴染みにするほどの決め手はなくて、両手に収まる俺の飲み屋レギュラーメンバー入りは果たさなかった。

前を通るとたまに戸が開いていて、ばあさんがじいさんになっていた。いや、このじいさん、向かいの煙草屋だろ、どういう流れだよと思っていたら今回の店主は20代前半のお兄ちゃん。

野球中継をつまらなそうに眺める彼に聞いて謎が解けた。お兄ちゃんは件のばあさんとあのじいさんの孫で、兼業している煙草屋はまもなく畳む予定だが祖父母は元気だと。

そこ夫婦だったのかよ!んでばあさん元気なのかよ!なんだか無性にうれしい。俺もこの街がすっかり長くなった。